このドキュメントは、プロジェクトスプリントの基本的な実践方法を説明している。CODE 理論編ベーシックと合わせて、プロジェクトスプリントに必須の内容を説明しており、これら二つのドキュメントは総称して「プロジェクトスプリント エッセンシャルズ」と呼ばれる。

プロセス編

最適化

プロジェクトスプリントでは、プロセスを通して最適化のタスクが生まれる。 最適化は、プログレス・アクティビティやチーミング・アクティビティといった、プロジェクトのゴールが達成されている状態や理想的なチームが形成されている状態に直接寄与する作業(実行)とは異なり、これらの活動をより効率的・効果的なかたちで促進するための取り組みである。

最適化の目的

最適化の目的は次の3つのいずれかである。

  • プロジェクトのゴールを達成するため
  • 理想的なチームを形成するため
  • プロセス自体を改善するため

ミーティング

ミーティング環境の構築

参加者

ミーティングの効果と効率を最大限発揮するためには、議論を促す人と議論をする人のそれぞれについて検討する必要がある。

議論を促す人

プロジェクトスプリントにおける会議が適切に機能するために、予め会議を運営するための各種作業を個々人に割り当てる(ミーティングロールの設定)。

具体的に必要なロールとしては、以下のようなものがある。

  • ファシリテーター
    • モデレーター:モデレーターの使命は、アジェンダを管理することである。冒頭のアジェンダの合意から、その後のアジェンダ進行とタイムキープ、会議終了時の次回のアジェンダの決定等が含まれる。
    • アクセラレーター:アクセラレーターの使命は、議論の促進と成果の質の向上である。会議冒頭におけるアジェンダの改善、その後の議論形成のサポート等が含まれる。
  • コーディネーター:コーディネーターの使命は、議論しやすい環境構築である。適切な会議室の確保、オンラインでの会議環境の設定、ホワイトボードやモニターの手配等が含まれる。
  • レコーダー:レコーダーの使命は、議事内容の記録と共有である。会議中の記録・共有によって参加者間の認識のずれを会議中に即座に修正すること、会議後の共有によって効率的な経緯の把握を可能にすること等が含まれる。

ミーティングロールは属人的な性質の低い作業であり、したがって持ち回りで担当することが可能である。

議論する人

素早く効率的な認識合わせと、納得を伴う意思決定を実現させるためには、アジェンダに関して網羅的に議論ができるメンバーがそろっており、またその議論をもとに正式に意思決定できる権限をもっている人が参加する必要がある(必要十分な参加者の招集) 。

ここでいうところの場(ba)とはミーティングが行われるの物理的・心理的空間のことを指す。

物理的には、プロジェクトスプリントの迅速な認識合わせを実現するために、前述の参加者が漏れなく参加でき、かつ、情報をリアルタイムに共有できる環境が整備されている必要がある。

またプロジェクトスプリントにおける意思決定は、メンバーの納得を伴うものである。このためには各メンバーが自律的に意見を発していることが不可欠となるが、これを保障するのが心理的安全性であり、これを保障できるような空間づくりが求められる。

時間

ミーティングは、予め開催日時の決められた定例会議となっていることが必要である。

あらかじめ決められた開催日時

素早く効率的な認識合わせと、納得を伴う意思決定に必要な参加者と場を確保するには、必要に応じたミーティングの開催では手遅れになってしまう。したがって、将来にわたって予め参加者の予定を確保しておかなければならない。

ミーティング開催の間隔

また、ミーティングはある一定の期間による開催とすることが不可欠である。これは、不確実性の高い状況下ではプロジェクトの進捗やゴールの妥当性・チームの状況の定点観測が欠かせないことから求められる。

アジェンダ

アジェンダの構成要素

「このミーティングでは、何について(コンテクストの理解)どこまで(完了時の理解)話し合うべきか」を参加者が理解していることが、効果的・効率的な議論に資する。これらは、ファシリテーターの助けを得ながら、アジェンダオーナーによってミーティング開始時に明示される必要がある。

コンテクストの理解
  • 何を議論するか(WHAT):議論したい内容の明示。
  • どのように議論するか(HOW):議論の進行方法の明示。
  • なぜ議論したいのか(WHY):そのアジェンダを議論する理由。
  • 誰から、誰への議論か(WHO to WHOM):誰がそのアジェンダについてのオーナーか。また、誰と議論したいのか。
  • どのくらいの時間議論するのか(WHEN):アジェンダオーナーが考えている、そのアジェンダを話し合うためにかかるであろう時間。
完了時の理解
  • あるべき姿(Goal):アジェンダを議論した後に参加者が認知している状態。
  • 結果(Result):アジェンダを議論した後に生まれているであろう明示的なオブジェクト。
  • みんなの納得(Evidence & Commit):参加者がアジェンダの完了について納得していることを証明する手段。

他の活動との接続

プロセスは、個々人のアクティビティをプロジェクト全体の成果に反映させるためのプロジェクトスプリント特有の仕組みであり、次のような仕組みを通じて、他のプロジェクトスプリント上の活動と接続している。

各ミーティングにおける仕組み

  • アウトプット確認:個々人のタスクの結果生まれたアウトプットを確認すること。
  • タスク確認:ミーティングを受けて生まれたタスクとその担当者を確認すること。
  • マイルストーンの調整:ミーティングを経て同期された認識をもとに、将来のマイルストーンを見直すこと。

この仕組みを実施する責任はファシリテーターにある。

継続的改善アプローチ

ミーティングを横断して実施され、プロジェクト全体を継続的に改善するアプローチとして、振り返りとテンショントリアージの二つがある。

継続的改善アプローチは、毎月/毎週など特定の期間を決め、定期的に実施することが原則である。ただし、これに加え、マイルストーン終了のタイミングなど実施してもよい。また、特定の問題が発生した際に臨時に開催しても構わない。この選択は、改善したい対象(次のマイルストーンに向けて改善したいまたはすべき内容か、直面している特定の問題がどのようなものか)によっても変わりうる。

振り返り:過去を省みる

振り返りとは、チームメンバーが過去のプロジェクトの内容についてレビューし、改善のための最適化を行うことができないか話し合うための仕組みである。

振り返りによって、プロジェクトスプリントの3つのドメイン(プログレス、チーミング、プロセス)における最適化のためのタスクが生まれる。

テンショントリアージ:いまの気持ちを共有する

テンショントリアージとは、チームメンバーがいまの率直な気持ちを共有し、改善のための最適化を行うことができないか話し合うための仕組みである。

テンショントリアージによって、プロジェクトスプリントの3つのドメイン(プログレス、チーミング、プロセス)における最適化のためのタスクが生まれる。

また、単なる最適化に留まらない重要な目的として、テンショントリアージという機会によって、チームメンバーが互いの考えていることや感じていること(テンション)を言いやすい環境が担保されるという点がある。


プログレス編

マイルストーン

マイルストーンの構成要素

マイルストーンは、下記の構成要素によって設定される。

  • 期日:特定の日付。
  • 成果物:どのような成果物ができている必要があるか。
  • みんなの納得:そのマイルストーンが達成されたということにチームメンバーが合意するための基準。

チーミング編

ロール確認

ロール確認は、チームメンバーが互いのロールを明示的に確認し、期待値が合致していることを確認することである。これによって、チームのステータスを確認することが可能になる。


Project Sprint CODE

CODEとは、プロジェクトスプリントの理論や実践について説明したドキュメント群である。理論編および基礎編と、任意で利用できる補足的事項を説明したプラグインから構成される。理論編と基礎編はさらに、ベーシックとアドバンスの2つにわけられる。理論編と実践編それぞれのベーシックを総称して、プロジェクトスプリント エッセンシャルズと呼ぶ。