プロジェクトの環境整備
実現したい状態と価値基準
Project Sprintが目指すのは、プロジェクトチームにより自律的にプロジェクトが推進されている状態です。そのためには、以下のようなことが必要となります。
各メンバーが、進化する目的や目標を深く理解・共感している
各メンバーが、誰かのマネジメントに頼らず自身の役割を理解している
各メンバーがチームに対してなんでも意見ができ、常に改善が行われている
これらを実現してProject Sprintの実施を助けるプロジェクト環境について記述します。
環境を作ることで実現したい状態
Project Sprintはスクラムと同様、「経験主義」と「リーン思考」に立脚しています。
経験主義とは、物事を理論よりも経験に基づいて考えようとする態度であり、スクラムガイドでは「知識は経験から生まれ、意思決定は観察に基づく」とされています。複雑性・不確実性が高く予測の難しい状況に対応するには、体系立った知識や完成したノウハウを正確に運用することよりも、実践や経験から得た知識を活かすことが重要だと考えているのです。
また、リーン思考とは、価値を生み出さない無駄な行動を省略し、本質に集中するという考え方です。今いるところにおいて最も重要な問題を特定し集中的に完結するというサイクルを繰り返すことにより、無駄を最小限に抑えながら価値を最大化することができます。
予測可能性を最適化してリスクを制御するためにProject Sprintでは、定例ミーティングで環境に対する認識を常に揃えなおしながら反復的かつ漸進的にプロジェクトを進めるというアプローチを採用しています。プロジェクトにおける取り組みについて定期的な振り返りと改善を繰り返しながら、ゴールに至るまでの道筋を少しずつクリアにするとともにチームが自律的に学習し成長することを目指します。
経験主義を支える「透明性」「検査」「適応」
経験主義においては、「透明性」「検査」「適応」という三つの柱の実現が重要であるとされています。Project Sprintではこれらを、以下のように解釈しています。
透明性: 創発的な取り組み過程や作業は、作業を実行する人とその作業を受け取る人にとって可視化されている必要があります。透明性とは、この可視化が標準化され、共通理解が持たれているということです。重要な意思決定は作成物をどのように認知するかに大きく左右されます。作成物の透明性が低いと、リスクを高める意思決定につながってしまう可能性があります。
検査: 成果物や合意されたマイルストーンに向けた進捗状況は、頻繁かつ熱心に検査される必要があります。潜在的な望ましくない変化や問題を検知するためです。定例ミーティングは変化を引き起こすように設計されており、この変化により問題を検知しやすくなります。 透明性の実現により、検査が可能になります。透明性が実現されていない状態での検査は、誤解を招く無駄なものになってしまいます。
適応: 取り組み過程の何らかの側面が許容範囲を逸脱していたり、達成すべきものとして設定されたマイルストーンが受け入れがたい場合には、現在適用されている取り組み過程やマイルストーンの構成要素を調整する必要があります。逸脱を最小限に抑えるため、この調整はできるだけ速やかに行われなくてはなりません。 関係者に権限が与えられていないときや、自己管理がなされていないときは、この適応が難しくなります。
チームの価値基準
スクラムガイドでは、チームが成功するかどうかは、次の5つの価値基準を実践できるかどうかにかかっているとされており、Project Sprintもこれに共感しています。これらの価値基準は、チームの作業・行動・振る舞いの方向性を示しています。
確約(Commitment): チームは、ゴールを達成し、お互いにサポートすることを確約します。
集中(Focus): チームは、ゴールに向けて可能な限り進捗できるように、スプリントの作業に集中します。
公開(Openness): チームとステークホルダーは、作業や課題を公開します。
尊敬(Respect): チームのメンバーは、お互いに能力のある独立した個人として尊敬し、一緒に働く人たちからも同じように尊敬されます。
勇気(Courage): チームのメンバーは、正しいことをする勇気や困難な問題に取り組む勇気を持ちます。
チームのメンバーは、定例ミーティングや作成物を用いながら、これらの価値基準を学習し探求します。これらの価値基準がチームや一緒に働く人たちによって具現化されるとき、経験主義が効果を発揮し、信頼が構築されるのです。
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