ロールの分類と性質

チームメンバーを知り、ロールを設定するで述べたように、プロジェクトスプリントでは、チームメンバー個々人の役割のことをロールと呼びます。また実務で使いやすいロールの設定で説明したように、プロジェクトスプリントでは、ミーティングロール以外には必ず設定しなければならないロールというものを決めておらず、ロールの定義についてはチームメンバーで合意することのみが必要な条件となっています。

しかし、この「チームメンバーの合意」は、必ずしも明示的なものとは限りません。つまり、Tips5で説明した「チーミングリード」「プロセスリード」のように、チームで名前を決めて共有されるロールもある一方、プロジェクトを進めていくなかで、あるメンバーが自然に担っていく暗黙的な役割があります。プロジェクトスプリントにおいて、前者は「明示ロール」と呼ばれ、後者は「暗黙ロール」と呼ばれます。

これらの区別は絶対的なものではなく、ある暗黙ロールが、何かのきっかけによって明示ロールとなることもありえます。

例えば、最初から暗黙ロールが十分に機能することはほとんどありません。つまり、「あの人がこれをやってくれるだろう」という阿吽の呼吸・暗黙の了解は、チーム発足初期にはあまり機能しないということです。多くの場合こうした暗黙ロールは一度「この人はこういう役割の人だ」という明示ロールとして表現され、この過程で期待値のすり合わせが行われます。その後、「あの人はこういう役割の人だからこれもやってくれるだろう」と、暗黙ロールも機能し始めるのです。チームメンバーの互いの期待値が合ってくると、未知の状況にも柔軟に対応できるようになります。

なお、暗黙ロールと明示ロールの割合はプロジェクトやチームによって異なるもので、最適なバランスもそれぞれ異なります。また、単純にロールの数が多いほうがよい、少ないほうがよい、といった点についても、一律の答えはありません。

ただし、ロールは次のような状態になっていることが望ましいとされます。

  • チームメンバー間で、ロールの中でやるべきことがより細かい粒度で理解されているほどよい。

  • そのチームにとって最もコストのかからない方法で、チームにとって必要十分なロールが共有されているほどよい。

  • 各ロールのやるべきことをお互いにフォローできればできるほどよい。

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